ひまわりと雪

小説
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最高ランク : 61 , 更新: 2023/06/09 9:53:35

そろそろ雪、やまないかな。



ぼんやりと曇った窓ガラスを眺めながら、思う。今日もいつもと変わらず、雪が降っている。除雪用シャベルが、向かいの家の玄関に投げ捨ててあった。

そりゃ、こんなに降ってたら諦めるよな。

俺だって、昨日諦めたところだ。避けても避けても、すぐに積もっていく。泥だらけで掃除をするようなものだろう。ただ、屋根の雪は一日に二回以上落としている。一日に放っておいただけで、家鳴りが酷かったから。

なぜこんなにも雪が降るのだろうか? 俺の家は、滅多に雪なんて降らない地域だったのに、可笑しいだろ。



可笑しいと言えば、最近は部屋の中なのに、寒くて仕方がない。滅多に袖を通さなかったベンチコートを、最近は毎日着ている。それなのに寒い。

電気代だって洒落にならない額まで上がっている。でも、道路なんか使えないし、電車だって止まっているから、仕事にもいけない。



あーあ、こういうとき雪が降る地域なら、対応が早いんだろうなぁ。まあこの地域を否定している訳じゃないが。なんせ、前代未聞の大寒波だからな。

今の俺の情報源はラジオだけ。しかも、電池式のものだ。電気代が右肩上がりの今、テレビなんてつけれたもんじゃない。スマホも、充電するのさえ渋るほど。


『えー、速報です。たった今来た情報によると、×××方面も酷い積雪に見舞われているようです。交通機関はすべて停止、政府は"早急に対応している"とのことです。続いて──』


······どの地域もここ数ヵ月、大雪の被害に遭っているらしい。もう日本も終わりなのかな、二回目の氷河期でも来るのかな。ああお腹すいた、どこの店ももう食料売ってないんだってな。

家の食べ物も、あらかた食い尽くしてしまった。今日の朝御飯は、なんだったっけな、昨日食べたよくわからないスナック菓子の残り。お腹が満たされるものも、栄養のあるものも、残っていない。


「······死にたくないなぁ」


今の状況じゃ叶うのかも危うい願いを、冷えた部屋で一人、呟いた。




カレンダーに目をやる。青空に向かってきれいに咲くひまわりが描かれている。なんて『季節外れ』なイラストだろう。


曇った窓ガラスを眺めながら、ボソッと一人ごちた。



そろそろ雪、やまないかな。

くろねこらいふ


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