桃太郎だけが知ること 【短編小説】

小説 桃太郎
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昔々のそのまた昔。

都の立派なおうちに、おじいさんとおばあさんが暮らしていました。おじいさんの名前は『桃太郎』といいました。

二人は仲が良く、ちゃんと貯金をする真面目な人でした。

立派なお家は、桃太郎の育てのお父さんとお母さんにプレゼントしたものです。もう今はこの世にいませんが、大切に住んでいます。


桃太郎とおばあさんは、二人で川で洗濯をしに行きました。

『動かないと、すぐに足腰がダメになるからねぇ』

というのが、二人の口癖でした。


じゃぶじゃぶと洗濯物を洗っていると、川上から


どんぶらこ、どんぶらこ


なんと、大きな桃が流れてきました。

桃太郎は、慌てて陸に引き上げました。まじまじとその桃を見て、笑い出しました。おばあさんも笑っていました。

「あっはっは、わしの親が言っていたことは本当だったんじゃな!」
「そうですね、てっきりおとぎ話かと思いましたよ。うふふ」


桃太郎が桃を担ぎ上げ、家に持って帰りました。

二人は、慎重に桃を机の上に乗せました。どうにか切ろうと鉈を取り出すと、不思議なことに、桃はパッカーン! と割れました。

ほぎゃあ、ほぎゃあと元気な男の子が出てきました。

桃太郎とおばあさんの間には子供ができなかったので、たいそう喜びました。

「桃太郎さんや、これは天からのお恵みものですね」
「そうだな、わしもこうして生まれたんじゃ」


二人は、桃から生まれた子に『桃太』と名付け、可愛がりました。

桃太は、あっという間に大きくなりました。

桃太郎は毎日楽しそうに、桃太が生まれたことと、自分の武勇伝を話しました。桃太は、桃太郎の武勇伝が大好きでした。


三人は幸せでした。



ある日、桃太は言いました。

「いいなぁ、僕も鬼退治してみたいなぁ」

かっこいいだろうな、と言いました。
そういうと、いつも二人は笑って

「鬼は桃太郎が退治したから、もういないんだよ」

となだめました。

そうだった、と桃太はおばあさんのきびだんごをほおばります。毎日のように、飽きることなく繰り返していました。



おばあさんは、門を叩く音に目を覚ましました。

なんだろう、こんな時間に来客? と、おばあさんは門を開きました。そこには、前から仲良しだった男がいました。

名前は、甚平です。

「あら、甚平さん。なにかあったのかしら?」
「た、たたたたっ! 大変なんすよ!」

甚平は、焦って言いました。


「奴が······、鬼が現れた!」


嘘だと思いました。しかし、甚平の慌てっぷりに信じるしかありません。おばあさんは、桃太郎と桃太を起こしに行きました。

「桃太郎さん、桃太! 鬼が現れたんですって! 桃太郎さん?」

桃太は起きてきました。しかし、桃太郎の姿がありません。

部屋に行くと、布団の中は空っぽでした。そして、窓が開いていました。桃太郎は用心深く寒がりなので、そんなことはしません。

きっと拐われたんだと、誰もが思いました。


みんな、泣いていました。

そんな中、桃太が声をあげました。

「僕が······、僕が鬼退治に行きます!」

みんな無理だと思いました。でももう、頼れるのは桃太しか居ませんでした。藁にもすがる思いで、桃太にきびだんごを渡しました。

桃太郎が着ていた服を着させ、刀を持たせました。



桃太は、鬼ヶ島に向かって歩いていました。と、草むらが揺れました。銀色の毛に覆われた、狼でした。

「お腰に付けているのは、きびだんごですか? もしそうなら、おひとつくださいな」
「僕は今から、鬼退治に行く。付いていくなら、あげましょう!」
「付いていきます!」

狼が、仲間になりました。



一人と一頭は、鬼退治に向かって歩いていました。また、草むらががさがさいいました。

飛び出してきたのは、茶色のタヌキでした。

「少年よ。君はもしや、きびだんごをお持ちで? もしそうならば、おひとつ頂戴な」
「僕は今から、鬼ヶ島に行く。付いていくなら、あげましょう!」
「もちろんお供します!」

タヌキが、仲間になりました。



一人と二頭は、鬼ヶ島に向かって歩いていました。すると、クルポッポー! も鳴き声が聞こえます。

灰色の、鳩でした。

「こんにちは! きびだんご持ってるでしょ? ひとつ頂戴!」
「僕は今から、鬼ヶ島に行く。付いていくなら、あげましょう!」
「ついていくよ!」

鳩が、仲間になりました。



一人と二頭と一羽は、鬼ヶ島に付きました。

そして、信じられない光景を目にしました。

「お父さん······?」

桃太郎は、鬼と仲良く宴をしていました。

桃太郎には、大きな牙が生えていました。ただ、他の鬼と違って角はありません。突っ立っていると、桃太郎がこちらを振り向きました。

「桃太······、帰れ」
「嫌だ!」

桃太は首を振りました。

「駄目なんだ、桃太。これ以上知ってはいけない」
「僕は、僕は鬼退治に来たんだ! もし鬼なら、お父さんも殺らなきゃいけないんだ!」
「やめろ、今なら戻れる」

桃太は、刀を構えていた。

「僕は、お父さんを救いに来たのに······。お父さんは鬼だったの?」


「去れっ!」


ビクッと、桃太は固まりました。狼も尾を巻き、タヌキもへっぴり腰になり、鳩は狼に隠れました。

桃太は、それでも言いました。


「僕は、鬼退治に来たんだ! 邪魔しないでよ!」


桃太は、桃太郎の隣の赤鬼を切りつけました。簡単に倒れました。青鬼も切りつけました。なにか、言いながら倒れていきました。








いっぱい倒しました。


狼とタヌキと鳩の分も倒しました。


桃太は、返り血で赤く染まっていました。

足元には、桃太郎が倒れていました。桃太は荒く息をして、泣いていました。後悔していました。

桃太郎の言うことを聞けばよかったと。


桃太は見てしまいました。


必死に子供を守るため、角のない小鬼を桃にいれる姿を。泣きながら桃を海に流す母鬼を。


「僕は、鬼だったの?」


お供の狼とタヌキと鳩は、鬼の死体に潰されて、死んでしまいました。

桃太が、全部をめちゃくちゃにしてしまいました。桃太は、同族殺しです。角のない小鬼は、桃に入れて流されることを知ってしまいました。




桃太は、勝ったとおばあさんに伝えるために、帰ることにしました。おじいさんは居なかったと、泣きならが伝えることにしました。




















真実を知る者は、もう桃太しかいません。










おしまい。

めでたしめでたし。

くろねこらいふ


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ど こ が 「 め で た し 」 や ね ん

しょぅゆ。
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@しょぅゆ。

鬼退治に行けてよかったね、桃太(´^ω^)

って感じですかね······?(作者)


くろねこらいふ
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